自然体PMのススメ:進捗管理(7/7)イニシアティブを握ること
- 2011.09.13
- その他
- プロジェクトマネージメント
顧客は、きちんとプロジェクトが進行しているか知りたく、きちんと終わるのか知りたがっています。これに応えられなければPMとしては失格であり、進捗管理において以下は顧客との関係において必須となります。
- 定期的な正しい現状報告、その報告が正しいことを示す証拠の提示
- 現状に即し、実行可能で理にかなった計画、その計画が選択された理由の提示
- 現状報告と計画によって、順調に進捗しているorゴールに間に合う、と判断できること
相当に難しいことに思われるかもしれませんが、プロジェクトは常にこの状態に置かれていなければなりません。プロジェクトの最悪な事態は、「間違った」「不明瞭な」「嘘」である報告から始まります。正しく現状を把握することは最重要事項です。現状把握ができない管理方法は最悪な事態への第一歩と言えるでしょう。
進捗管理の方法を提案しイニシアティブをとる
プロジェクトを管理する方法は通常プロジェクト開始後になんとなく決まることが多いようです。マスタースケジュールを顧客が持っていて、その方法に追従するようなケースもあります。色々なケースがありますが、まず、進捗報告のツール・運用方法・報告の頻度及び内容などについて、100%開発側から提案し顧客に受け入れてもらうことが【肝】です。なぜなら、これは自分たちの作業を管理するワークファイルであり、顧客の必須要件を満たすには自分達に適した方法を使う必要があるのです。
大事なので力を入れて書いてますが、経験上、これはあまり実現が難しくはありません。6/nで載せたExcel(以下、実例)も大企業相手でも、さしたる抵抗なく受け入れられています。おそらくですが、どこも本当に良い進捗管理方法は分からないので、きちんと提案してくれて、理にかなったシンプルな方法であれば、これでまずやってみようと思うのではないでしょうか?
進捗方法が自分たちの提案に基ずくことで、進捗管理にありがちな膨大な管理業務からの解放と、進捗線との不毛な対峙の回避、ができる1つの前提ができたことになります。顧客にとってももちろんよいことです。ベンダー管理をしなくてもきちんとした報告をすると提案されることは、進捗については完全にベンダー責任と言えるのです。
プロジェクト管理全般に言えますが、進捗管理もイニシアティブを常にとることが大事です。最終結果を出すためには、手段を限定されることは大きな制約であり、その要求元が顧客であれば拒絶することは難しいのです。だから、顧客がはっきり明確な意思を持っていない初期段階で進捗管理の手法を決めることは、真っ先にすべきことです。
スケジュールはみんなが見るもの
たまに、顧客に見せるスケジュールと内部でのスケジュールの2つを持っているべきというような話を聞きます。端的に言えば、それはダメです。まず、2つもあっては効率が悪いし、双方が違う理由が不純です。言った人は、実は進んでいるけど、進んでいると言えばバッファーが無くなっちゃうという意図(それは実際悪くない)で話しているのですが、それはプロジェクト前半の話で、多くの場合プロジェクト後半は顧客側で良さそうに見せて、自分側に本当は遅れたものがある、なんてことになります。
スケジュールは正しく1つあるべきで、それによってみんなが安心し、その実現に本当に頭を使うことができます。例えば、実例では、プロジェクトメンバーの休暇の行が上にあります。「この日は休みなんです」と顧客にもちゃんと伝わっていることを知っている方が休みやすいし、仕事も頑張ろうと思うものです。顧客への報告と同じタイミングでメンバーにもきちんと同様の通知をすることが進捗管理には重要です。
実例の運用ルール ~ イニシアティブを握れば効率が上がる
実例の運用ルールを書いていきます。ただ、実例は延べ7名全部で13週に渡ったプロジェクトの前・中・後期の各1週を抜き出しているので、実例に無いルールもあります。
- 今週の予定表を実績で書き換える。各項目の進捗度を入れるが、早く終わってしまったもの、延びてしまったものなど、実績を正しく反映させていく。できるだけ数値化する(9/18なら50%)。数値化できないものは、PMから見た場合の完成度評価とする。前週予定外に行った作業も実績として追加する。
- 次週の予定は、前週のスケジュールをコピーし、作業項目を見直す。追加項目やリスケ項目は黄色に塗り、削除項目は黄色に取り消し線(次週は本当に消す)を引く。項目ごとに名前と期間を追加していく。
- 問題点は、マイルストーンの達成への課題点を中心に書きます。顧客に解決してほしい問題を具体的に日時を切って依頼したり、どんな作業をしなのかや、今後の予定についての説明を書きます。
- 毎週定例会議でA4・1枚で説明を行う。実績報告と今後の計画と問題点
進捗管理の運用では、正確な実績のプロットを行い、次週の予定をリスケするのが30分くらい、顧客への説明は30分もあれば終了です。個々の場面での最善手を考えることは難しいのですが、1週間分だけでよく、それも明日変えてもよいという状況では、それほど時間をかけずに行なえていますし、時間をかけてはいけないのです。
実際のプロジェクトの後半では直接の会議ではなくExcelレポートだけで済むようになったことと、本当の終わりの2週間前には、もう管理するものはないので(残りはドキュメントやサポート)、進捗管理は必要な無しと報告して終了しています。このように、進捗管理でイニシアティブを握り続けることができれば、プロジェクトを非常に効率的に運用することができます。
常にアヘッドする方法
進捗線は、そもそもディレイするように仕組まれていると4/nで書きました。それは、線以外のことをやらねばならないから、進捗線は必然的に遅れるのだと書きました。
実は同様に理由によって、この自然体PMで進めている進捗管理方法は、必然的にアヘッドする方法なのです。なぜならば、常に今までの実績を引いて、計画を作るので表上は常にオンスケになっています。しかしながら、実際には表に書かないような作業もやらねばならないので、やっています。つまり、この部分は実はアヘッドしているのです。
つまり正しい現状把握ができれば、明日・次週の策が計画でき、それは実は先行部分を含んでいて隠れた余裕となります。後はプロジェクトの残り時間に対して、最後のゴールに危うさを感じなければ、顧客はあなたにプロジェクトを委ねたことに大きな満足を感じながら、本来の業務に専念することができるでしょう。
進捗管理の終わりに際して
漸く、進捗管理について書き終えましたが、進捗管理における自然体とは、仰々しいプロジェクト管理をするのではなく、今の現状可能な中で最も効率的に進む作業を見つけることと、現在の進捗を測ることを基本作業とする姿勢のことです。プロジェクトは無駄を省けば成功すると2/nでは書きましたが、進捗管理そのものも無駄を省くことが肝心です。
毎週リスケを考えるのは大変そうですが、やってみれば意外に地に足がついた作業で、割とできるものです。実際には仰々しいスケジュール管理に隠れながら現場で行っていたことを、プロジェクトレベルで前面に持ってきた言えるのではないでしょうか。
この方法も万人に対する万能薬ではないし、
どんなプロジェクトにも有効ではないかもしれません。ただ、1/nでも触れているように、真面目な人であればある程度のトレーニングを積めば、そのエッセンスは有効に活用できるのではないかと思います。
次のテーマは...
進捗管理の次のテーマは、まだ決めていませんが、次のようなテーマについて触れる機会があればよいなぁと思っています。
- 教育・育成・スキルアップへの取り組み
- プロジェクトメンバー管理
- プロジェクト・コミュニケーション
- 要件定義とアーキテクチャ
- プログラミングルール、フレームワーク
【進捗管理 完】