自然体PMのススメ:進捗管理(2/n)無駄をなくせば成功する

進捗管理の目的はC/Oを守ることですが、守ったかどうかは最後まで行かないと分からないので、途中途中では生産性が高いかどうかを指標とします。生産性を上げるには能力を上げるか無駄を省くかのどちらかですが、進捗管理ではこのうち無駄を省く方に力点が置かれます。

現実は予定から離れていくもの

進捗管理を簡単に言えば、無駄をなくすこと、より効率的に仕事をできるようにすることです。無駄が排除できればプロジェクトは成功します。行動が全て有益で、正規の時間をきちんと仕事していてなおC/Oできないようであれば、そのプロジェクトは受注自体に問題があると言えます。

当たり前ですが、その組織に技術・経験・道具や人員・設備・資金など開発可能な基本的な能力が無い場合には、どんなことがあってもプロジェクトは失敗します。多くのプロジェクトは見積り時点で失敗しています。自分達の基本的な能力を超えていないかどうかを、受注時に見極めることが大事です。

逆のところには大きな希望があります。能力内の案件は、無駄をしないで開発が遂行できれば、無理をしなくても、必ずうまくいきます。なので、無駄をしない細心の注意と知恵を身に付けることが肝心です。

無駄な動きや何もしない無為な日を送らないように、予定を決めておくのがスケジュールです。ところが実際には予想外の事態が常に生じるために、予定通り作業を進めるのは難しくなります。かといって予定を無視したことをすれば、何をするかを考えるのに時間が掛かってしまいます。つまるところ、どうやっても予定と現実が乖離していきます。無駄なく予定通り作業を進めるのは非常に困難です。この為、多くのプロジェクトではスケジュールはあるけど誰も信用しないとか、もう誰も保守しないとか、進捗も各個人が実態を知っているだけでその報告頼み、みたいなことに陥ります。

では、どうすればよいか、整理していきたいと思います。

できないことはやらない。できることを探す。

プロジェクトの作業は、局面やメンバースキル、要件・コスト・作業状態・顧客状態など、非常に多くの要素を考慮に入れなくてはなりません。またすべきことは、要件定義・画面作成・レビュー・設計・環境構築…と色々あって、かつシステム全体・サブシステム毎・アプリ毎に詳細化されたり、PC開発環境・サーバテスト環境・本番環境毎にもあります。これらをスケジュール表やWBSに落とさなければプロジェクトが動き出しません。当然、最も生産性の高い方法を取らないと終わらないし、最後までスケジュール線が引けないと安心できません。

とはいえ、現実的なアプローチにするにはもう少し単純化しなくてはいけません。生産性が一番高い方法が分かればいいのですが、実際にはそう簡単に分かるものではないし、先のこともそれほど分かりません。それでもある種の刷り込みやプレッシャーにより、「こうならねばならない」という視点で複雑なスケジュール表が作成されがちです。このようなスケジュール線・WBSには、「スケジュール通りに実行できない」「スケジュールが管理できない」という2つのできない問題があります。できないことはやらないようにしないといけません。

次善の策として「できそうもないことはやらない」ということを考えましょう。できそうもないことは、担当者とよく話しをすれば大概正しい判断ができます。ここで注意する点は、できない理由を探せばいくらでも見つかるので、何もかもできそうもないように思えてしまうことです。よく考えれば、少しチャレンジャブルでも十分できそうな作業が見つかるはずです。できることを探すには、できそうもないことから何かを削ればできるようになるはずです。しかし、時間を増やすことはしてはいけません。作業を小さな単位にし時間を短くすることが必須で、時間が足りないという問題の解決を時間を長くすることに求めてはいけません。

最初の落とし穴。スタート直後のスケジュール作りが無駄を生む

スケジュールを引くことを仕事と勘違いしているプロジェクトが多くあります。PMがGMに、GMがTMにスケジュールを出すよう指示し、それをまとめて全体スケジュールを組み立てるようなこともあります。こうなるとPM→GM→TM(ここまで説明と指示)→GM→PM(ここからまで提示と説明)→調整会議→…という果てしの無いスケジュール・進捗会議が繰り返されます。当然、この間でもプロジェクトは進み続けています。これではうまくいきません。

プロジェクトが始まっているのにスケジュールが無いとか、スケジュールされた時にはもう遅れているとか、変てこな事態になったりします。当然、無駄な作業や待ち時間などが大量に発生し長く尾を引いてしまいます。3つの基本を忘れずにいましょう。スケジュールは仕事にしてはいけません。スケジュールは仕事が始まる前にトップダウンで与えます。進捗(実績)報告はボトムアップでするものです。

計画(未来)はマネージャーから与え、メンバーは実績(過去)を報告する。マネージャーは過去の実績から未来を計画し伝えるのが仕事であり、迅速かつ正確な実績把握が重要であり、プロジェクトの最初にその流れを作らねばなりません。良くある間違いは、マネージャーがメンバーに計画を提出・説明させることで、場合によっては計画を差し戻したりすることです。現場は実際に作業する立場なので、より正しい計画を立てられる(管理者は現場間の調整をする)というような言い方もしますが、これは大概うまくいきません。現場に近いところから計画作業とそれに伴う説明責任や実行責任を除去するだけでも、大きな無駄の発生を防ぐことができるでしょう。

nijiirokuwagata

次回以降の予定

スケジュールは存在することに意味がある。という話しを聞いたことがあります。その時は、確かにそういう面もあるなぁ、どうせ守れないけど無いと困るし、顧客対応の道具という面もあるしなぁ、みたいに思いました。思い返してみれば、うまくスケジュール作りや進捗管理ができなかったから、反論できなかっただけなんだなと思います。

次回も引き続き、できないスケジュールを引いてしまう理由について、記したいと思います。

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