自然体PMのススメ:進捗管理(5/n)マイルストーンに向かって走れ

進捗管理をうまく行うために、いくつかの考え方を身に付けないといけません。今回提唱するマイルストーンを軸にした進捗管理も、誤った使い方をしてしまえばガントチャートと同じような結果になりかねません。

予定通りかどうかは気にしない。予定が組めるかが重要

予定通りかどうかは、予想が当たったか外れたかにということです。当たったからといって正しい道を歩んでいることは保証されません。逆もまたしかりです。実績評価で重要なことは無駄なことをしなかったかどうか?です。時間が有効活用されているならば、予定との違いは、順序が変わったとか新たな状況が生まれたという解釈ができます。そして通常うまくいっている時も予定通りということはほぼありません。無駄な時間があったならば改善しなくてはいけませんが、認識すべきことは、時間が進み、予定を組んだ時と状況が変わっているということです。時間が進んだ時点では、これからの日程を以前より正確に見通すことができます。このため、以前の予定(予想)に縛られた予定を進むことは間違っています。重要なことは今から予定が組めるかどうかです。

常にオンスケ。ただしリスケできる時に限る

C/O日を無事迎えられると仮定すれば、常にオンスケジュールであると言えます。進捗状況とは予想とのギャップであってリスクを測る上での物差しと考えます。ただし、スケジュールがそのままであれば、管理上遅延は遅延であってこのままではC/O日をずらす必要が生じます。つまり再スケジュール(リスケジュール、リスケ)が必要であり、プロジェクトがうまくいっているのであれば、C/O日をそのままに無理の無いリスケができるはずです。リスケできるという確信があれば、プロジェクトはいつでもオンスケです。

リスケを日常業務に。ただし局所的に

予定は常に変わるのでリスケすることを日常業務化して、細かく実情を把握し、常に未来のことを考えるようにします。ただし、3/nの回でも書いているように過度に未来にわたってリスケするのは駄目です。よく見えるようになった部分を書き換えるだけにしておかないと、労力は無駄に、指示は遅くなります。プロジェクトはスピードが命なので、リスケによるオーバーヘッドはあってはいけません。実践するためのポイントは、管理表は極力シンプルかつ見易く、少なくすることが挙げられます。

マイルストーンは単純な中間目標でリスケされない

常にリスケされるプロジェクト運営をすると、メンバーは何を基準に開発を進めてよいのか分かりにくくなります。そこでマイルストーンという中間目標を定めることが重要になります。この、マイルストーンこそが進捗管理の肝です。マイルストーンは、単純かつ検証可能である必要があります。メンバーは現在の作業を予定通り進めてもよいし、もっと良い方法や状況の変化に応じて別の作業をしても構いません。マイルストーンの実現に少しでも早く到達することに役立てばよいのです。ある作業は最後にはきっと必要だが、とりあえずマイルストーンの実現には関係がなければ、そこを省いても構いません。必要と思えるものでも今必要でなければ、それを止めることによって無駄を省く可能性があります。こうした役割からマイルストーンは勘違いや別解釈のできないほど単純かつ検証可能であることが求められます。そしてマイルストーンはリスケされません。なにがなんでもその時に通過しなければならない目標です。これをクリアできるリスケが不可能であれば、人員をつぎ込むなり要件を削減するなりしなくてはなりません。これほどマイルストーンは重要です。それでも中間地点で問題に気がつけるのであれば、これはまだ幸運です。多くのプロジェクトでは、この判断を最後までしないので最後になって火を噴いたりギブアップする目に会います。中間地点で要件削減を提案したり工数を積み増すには強い決断力・交渉力が必要ですが、C/O近くで実行する状況に比べれば選択の幅はずっと広いものです。

賢いマイルストーンがプロジェクトの成功確率を高める

適切なマイルストーンが配置されていると、プロジェクトはその1つを乗り超える度に成功できるんだという確信を強くしていくことができます。そして中間時点の頑張りは終盤の追い込みより遥かに高い生産性を発揮します。プロジェクトの初期段階のマイルストーンは、緩みがちで無駄が出がちなスタート時の雰囲気を引き締めます。開発が広い範囲に拡大してくるとメンバー間で状態が分かりにくくなりますが、そのような場面にマイルストーン置くことで、プロジェクトの状態を再認識・共有できます。非常にタイトなプロジェクトであれば、中間の非常に高い目標となるマイルストーンをクリアさせることで、スケジュールが見通せるようになります。繰り返しますが、マイルストーンの重要な点は、「このプロジェクトは終わりそうだ、成功しそうだ」と思わせることにあります。その希望こそ、メンバーがプロジェクトを楽しく有意義に過ごせる何よりの精神的な支えとなります。

どんなものがマイルストーンとなるか?

実際のマイルストーンにはどんなものがあるかを挙げてみます。

  • 4/20に全ての画面サンプルのリンクを完成させ顧客レビューを依頼する
  • 5/7に既存画面の移植を終えて紙ベースの資料を破棄する
  • 6/10に全テーブルに整合性のあるテストデータを100人分登録する
  • 7/31に「会員登録~カートで買い物~振込み決済~出荷通知」までの正常系一連の流れのテストを行う
  • 8/20に現在の機能内のバグ123個を10個以下にしてベータ版をユーザーに提供する

上記の例はある段階でのプロジェクトメンバー全員が共有できるものです。普通の目標と何が違うのか?というと、普通の目標は次のようなものです。

  • 4/10に画面定義をFixする
  • 7/10に外部インターフェースとの疎通確認をする
  • 来週中にログイン機能のUTを終える

これらは局地的な目標であり、担当者の目標であったり、完了の定義が曖昧であったりします。もちろんこれらは例なので、場合によってはマイルストーンであったり無かったりしますが、おおよそ雰囲気は分かると思います。

良いマイルストーンのさらに3つの条件

また、良いマイルストーンの条件は、単純・全員参加・検証可能に加え、①絶対通過点②実現限界点③最短設定の3点があります。

  1. 絶対通過点はプロジェクトが必ず通過するポイントであることです。場合によっては通過する必要がないのであれば、多くの努力を払う力は湧いてきません。
  2. 実現限界点はギリギリ実現できそうな目標であることです。簡単に実現できそうならば目標にならず、できそうも無い時も最初から諦めムードなりとなり、できない時に言い訳が通じてしまいます。
  3. 最短設定とは、一番短い時間で実現できるものに設定するべきということです。高い生産性は短い時間しか持たないし、長くするほど状況の変化によって目標としての価値を損ないかねません。

追加した3つの条件の中で、絶対通過点が最も重要で、一番易しい条件です。まずは、単純・全員参加・検証可能+絶対通過点という観点で設定していくのが、良いトレーニングになるでしょう。実現限界点の設定はPMとしての能力が試される非常に難しい条件です。最短時間は実現限界点が設定できれば、おのずと満たされるでしょう。

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今回のまとめと次回の予定

 今回の話は、「短いサイクルで進捗を把握しリスケしながらプランを維持管理し、マイルストーンという方法で実際の進捗力を確保する」とまとめられます。今回までで、進捗管理の理論的な部分については大体説明できました。もう大詰めの次回はいよいよ実際のツールを使ってどうやるのか?事例を踏まえて説明していこうと思います。

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