携帯サイト開発で実機テストが欠かせない理由とは?

シンメトリックでは様々な携帯サイトの開発を行っている。公式サイトから各種キャンペーンサイトまで幅広い。

そして携帯サイト開発で必ず行っていることといえば、実機テスト。携帯シミュレータやFirefoxでの動作確認も行っているけど、PCでのチェックは補助的な扱いとなる。どんな場合にでも、絶対に実機テストを欠かすことはできない。

それではなぜ、それほどまでに実機テストが欠かせないのか?PCブラウザでの確認で十分ではないのか?

「携帯の実機を使用しなければ確認できない項目が多すぎる」。これこそが実機テストが欠かせない大きな理由になる。今回は実機テストの必要性を具体的な例を挙げて説明したい。

【理由1】PCブラウザで表示できても実機では表示できないことがある

例えば外部CSSを使用したページは、PCブラウザでは難なく表示される。しかし、いざdocomo端末からアクセスすると、CSSで指定したデザインにはならない。

また「髙島屋」という文字はほとんどのPCブラウザでは正しく表示される。が、携帯ブラウザでアクセスしても「髙」は表示されない。

これはPCブラウザの性能が携帯ブラウザの性能よりも高いために発生する。性能の高いPCブラウザで動作確認できたとしても、それよりも性能の低い携帯ブラウザで動作保障がないのは当然といえば当然。

他にも以下の要素を含むページでは、PCブラウザでは表示できたとしても、携帯では機種によっては表示ができない。

  • GIF/JPEG/PNGなど様々な画像(表示可能な画像フォーマットが機種依存)
  • 不正な画像(拡張子と画像フォーマットが異なる画像など)
  • イメージ送信ボタン(<input type="image">)
  • フレーム
  • JavaScript
  • Flash
  • 特殊記号(ハート等)
  • ASCII/日本語以外の文字
  • Shift_JIS以外のエンコーディング
  • Cookieを使用したページ
  • HTMLサイズが5KBを超えるページ
  • 1KBを超えるCSS
  • XHTMLページ

携帯サイトのHTMLだから大丈夫・・・という考えだけで、実機テストを省くことができるだろうか?

ちょっとした修正だから・・・と、ついついPCブラウザだけで動作確認を済ませてしまいがちだが、PCブラウザでの確認だけでは不十分といえる。

【理由2】実機でしか確認できないことがある

実機テストが必要な理由の中では、「実機でしか確認できない点がある」という理由が一番重要になる。

代表的な例で言うと、フォームの初期入力モードistyle属性。この属性は携帯独自で定義されたものなので、PCブラウザには対応していない属性だ。携帯シミュレータでも動作確認できない。

となると、初期入力モードが正しく機能するかどうかは、結局実機でチェックするしかないのだ。

他にもこんなケースがある。

1. 着ボイス・着うた・着メロ

携帯の音声ファイルは、携帯実機でしか再生できない独自フォーマットであること多く、PCでは正しい音声ファイルなのかどうかの確認ができない。その上、ファイルサイズやフォーマット、Content-Typeヘッダ、URL、ダウンロードタグの記述・・・などなど様々な条件をクリアしなければ、ダウンロードや再生ができない。

2. 絵文字の表示と入力

絵文字の表示は、FireFoxのプラグインやシミュレータでほぼサポートされている。が、実機で確認すると、知らない間に絵文字が微妙に増えたり減ったりしていることも・・・。SoftBankだと「Web形式」の絵文字がSSLでは表示できないという現象もあるから、実機では確認しておきたい。

また、フォームで絵文字を入力するには、docomoの絵文字に限るならi絵文字で可能だが、SoftBankやauはムリ。

3. 電話リンク

telリンク <a href="tel:03xxxxxxxx"> で本当に電話がかけられるかどうかをテストするには、さすがに携帯電話を使用しなければならない。

4. キャリアとのシステム連携

マイメニュー登録やメール受信可能ドメイン設定など、各キャリア固有の提供サービスに密接に関係した機能は、実機からのアクセスのみが許可されている。

5. IPアドレス制限

携帯サイトは、IPアドレスによってアクセス制限を行っているサイトが多い。そのようなサイトだと、携帯以外からのアクセスは拒否されてしまうため、必然的に実機でアクセスすることになる。

【理由3】ユーザビリティのチェック

ユーザビリティチェックは、実機テストを行うための積極的な理由になる。操作性という意味では一見PCブラウザでもチェックできそうに思えるが、やはり実機とPCでは感覚が違う。

たとえば次のようなチェック項目が挙げられるだろう。

  • 1画面に必要な情報が収まって表示されているか?
  • 画像が大きすぎないか?小さすぎないか?
  • ページが縦に長すぎないか?
  • 生年月日や郵便番号は少ないボタンクリック数で入力できるか?
  • 選択肢は携帯での操作上、選択しやすいか?
  • ページ全体が表示されるまでの時間は許容範囲内か?
  • システムからの送信メールのタイミングやメール数は適切か?

携帯の場合、「入力インタフェースが10数個のボタン」「画面が小さい」「大半の機種がタブブラウザではない」といったことがユーザビリティに大きく影響しやすい。

まとめ

これまで書いてきたように、実機テストを行うべき理由はたくさんある。表形式でまとめてみた。

カテゴリ 項目
PCでは表示可能だが携帯では機種により表示(使用)不可
  • 特殊な漢字(「髙」「眠」など)
  • 特殊な記号(「♡(ハート)」など)
  • ASCII/日本語以外の文字(「é」「한」など)
  • GIF/JPEG/PNGなど様々な画像(表示可能な画像フォーマットが機種依存)
  • 5KBを超える画像(表示可能な画像ファイルサイズが機種依存)
  • 不正な画像(拡張子と画像形式が異なる場合など)
  • イメージ送信ボタン
  • フレーム
  • JavaScript
  • Flash
  • Shift_JIS以外の文字エンコーディング
  • Cookie
  • HTMLが5KBを超えるページ
  • 1KBを超えるCSS
  • XHTMLページ
  • SSL
携帯でのみ確認可能
  • フォームの初期入力モード(istyle属性)
  • 着ボイス・着うた・着メロ・動画のダウンロードと再生
  • きせかえツールのダウンロードと設定
  • 絵文字の表示と入力
  • 電話リンクの動作
  • マイメニュー登録、メール受信可能ドメイン設定など
  • IPアドレスが携帯のみに制限されたサイト
携帯のユーザビリティ